孔版印刷機は一般的にベタの多い印刷物が苦手です.孔版印刷のインキは水分が多く,それが紙にしみ込んで波打ちやカールの原因になることがあるためです.
図 孔版印刷が不得意とするベタの例
特に,全面ベタや枠ベタ,柱ベタなどは紙詰まりが頻発し,印刷そのものができなくなってしまうこともあります.
このため,孔版印刷はあまり大きなベタのない印刷物にお勧めします.傾向としては,厚い紙より薄い紙,片面刷りより両面刷り,単色刷りより多色刷りのほうが影響が大きくなります.
元々孔版印刷が主に使われていた文字中心の印刷物ではあまり問題になりませんでしたが,ベタが多い印刷物などは汚れやすくなることがあります.
特に,孔版印刷機は機械の中心に紙を送るためのローラや紙を分離するための爪があり,その部分にベタが乗っていると汚れることがあります.
図 特に多色刷りで汚れやすくなる部分
多色刷りの場合,汚れやすい部分を最後まで空けておいて,最後の1色で印刷することで回避できることがあります.(弊社で作成している孔版印刷のインキ色見本は15回印刷機に通しているため,この方法で汚れを出さずに作っています.)
孔版印刷機は簡易な方式の印刷機のため,印刷位置が合いにくいです.これは機械に紙が入るときの位置合わせが厳密でないことと,孔版のマスタ(版)が印刷中に伸びたり傾いたりすることによるものです.このため孔版印刷では2㎜~3mm程度の位置ずれが生じることがあり,厳密な位置合わせは向いていません.
このため,多色刷りは位置がずれることを前提にデザインすることをお勧めします.特に人物の目などは合わないことのほうが多いです.